動き出す絵画・レンブラントの夜警


先日「レンブラントの夜警」を試写で見ました。
遅れながらもその報告をします。

「レンブラントの夜警」の感想は、これは理解する映画ではなく、感じる映画ということ。
まず初めに言っておくと、この作品は、会話も人名が多くて、
途中で区別が付かなくなり混乱します。話の流れも大筋は分かるけれど、細部になってくるとよく分からなくなってくるでしょう。
かなりぶっちゃけて言いますが…
 
しかしそんなことはどうだっていいんです。
画面にあふれるぼんやりとした光とか、映画の中での音楽とかが
僕の心の中で膨らんで、2、3日は頭から離れることがありませんでした。
ピーター・グリーナウェイ監督は、今までにもそんな映画を撮ってきた異色とも言える監督です。
おそらく変人気質な。
中学校のころ、ある映画雑誌で偶然にも
グリーナウェイの「zoo」という映画のポスタージャケットを目撃しました。
そのジャケットの、シマウマの死体が投影されたスクリーンを見ている双子の兄弟が、
妙に印象的で、なんだか見てはいけない物をみてしまった妙な気分、
入ってはいけない場所に足を踏み入れた気持ちになったのを覚えています。

だから僕の中で、グリーナウェイとは、人の脳や心に直接的な印象を残してしまう監督です。
さて、今回久しぶりとも言えるグリーナウェイの新作、
「レンブラントの夜警」はどうだったかというと、
案の定、じっとり湿った匂いのたちこめた、彼らしい作品に仕上がっていました。
グリーナウェイは以前画家としての勉強をしていただけあって、
今回は非常に絵画的な画面構成で、始めの15分で僕はやられてしまいました。

はじめの食卓のシーン。
それぞれの食卓にレンブラントの家族や召使、弟子などが座って食事をしているシーンです。
たあいもない会話。しかし画面は一枚の大きな絵画のようです。
おそらくその時代の絵画でこういうのがあるんだろうと思います。
一瞬、美術館で絵を観賞しているような気分になります。
そして目をこらすとその絵の中の人々がかすかに動いています。
絵の中の人間が生きている、動いて食事をして、話している。
とても不思議な感覚です。グリーナウェイの魅力はまさにこの感覚です。

もう一度言うと、グリーナウェイの作品は、理解しようとするのではなく感じることが大切です。
話の流れなどそっちのけで、その時その時の
セリフとか音楽とか風景とか人間とかいったものを感じる見方もありだと思います。
映画を観終わって、「あのシーンのあのセリフが好きだった、もう一度見たいな。」と思えればいい。
 
テレビドラマみたいにストーリーを語るだけの単純明快な作品ではありませんが、
それとはまた別の面白さがある映画です。


ryuzo





2008⁄05⁄13(Tue) 10:27   シネマホール | | | ↑Top
欲情と愛を武器に彼女は・・・・


「ラスト、コーション」を東京で観て、先日試写で2回目を観ました。
やっぱりすごい。

話題になっている激しいベッドシーンもさることながら、
とにかく濃密な時間と空間。

顔のアップシーンが多いというのも一つだと思いますが、
上海の上流婦人たちのマージャンシーン一つとっても、
マージャンの手を読もうとしているのか、
それとも互いの本音を読もうとしているのか・・・
洗練されたチャイニーズドレスの美しさ、綺麗にマニキュアされた手に輝く
「鳩の卵」のような宝石の指輪。
まったく隙のないファッション。

ワンとイーが始めて二人で見つめあうレストランのシーン。
互いを探るような、挑発するようなまなざしと、
綱渡りを楽しむような会話・・・



当時日本軍に占領された中国の若者たちにとって、
未来を描くこともできず、今を自由に生きることもできなかった。
演劇部の学生が「愛国心」をテーマに演じたことで、
愛国思想に傾いていく若者たち。
そして、ついに「演じる」ことを武器に、
売国奴として憎まれ、そして徹底した冷酷さで恐れられいた
イーの暗殺を企む。
彼らにとって、それはまだゲームのようなものだったのかもしれない。
ある時点までは。

ある陰惨な事件をきっかけに、後戻りできなくなる彼らの中の一人
最も演技がうまく、そして内に秘めた激情も大きなワンが、
プロの女スパイとしてイーに近づき暗殺する「役」を演じることになる。

LUSTとは、欲情の意味。
そして、戒は、戒めであり、中国では「指輪」の意味もあるという。
この映画にとって、「指輪」は大きな意味を持ちます。

そして、欲情が愛に変わるときの男と女の切なさと、
己の中に、思いかけず生じたむき出しの愛を知った時の、孤独。

それを描こうとすれば、やはりあの暴力的でありながら、
なにか悲しいセックスシーンにも納得ができます。

稲垣吾郎がある番組で言ってました。
「セックスシーンで涙が出る映画って始めて」
思わずうなずいてしまう私でした。

mm













2008⁄05⁄09(Fri) 12:23   シネマホール | | | ↑Top
映画館まるごと体験ワークショップ模様


この静かな連休中を利用して映画館の裏側を体験しもらおうと企画した
『映画館まるごと体験ワークショップ』に3日3人の方が参加してくれました。
taikenws3.jpg

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朝のシネマホールの清掃から始まり、映写の仕組みやフィルムの取扱、
チケットカウンターでのお客様との対応、映写、裏方の事務作業として
シアターガイドの会員向け発送作業をしていただきました。
参加いただいた皆さんお疲れ様でした。
taikenws2.jpg


今回始めての企画ですが、今後子供向けの体験ワークショップなども
企画したいと思っています。

映画だけでなく、ライブホールでの音響や照明などの体験ワークショップもありですね。










2008⁄05⁄04(Sun) 12:27   未分類 | | | ↑Top
アーティスティックなゴールデンウィークいかがですか?


実のところ、GWとか連休は静かなフォルツァ総曲輪です。
GW向けの、超大作!とか話題作などはどちらかというと縁が無いので・・・・

とは言え、こういう時にこそじっくり見て欲しいな〜という
ドキュメンタリー2作品を上映中。

バレエファンならおそらくご存知の幻のバレエ団「バレエ・リュス」(ロシアバレエ団)
の波乱万丈の歴史を紐解くドキュメンタリー。
1909年に初公演を果たして以来、天才興行師ディアギレフに率いられ
20年間各地で魅了し続けた伝説のバレエ団が、
ディアギレフ亡き後も、その後後継者によって引き継がれていく。
ただのバレエ団と違ったのは、ピカソ、マティス、シャガール、ドビュッシーなど
この時代のアーティストがこぞって、舞台芸術の中でコラボレーションしていること。
かなり革新的で、芸術性を求めた舞台づくりこそが、
人気の秘密だったようです。

往年の名ダンサーたちも今や80歳代。
輝くばかりに美しかった現役時代とは別の美しさと
自信にあふれている姿に感嘆してしまう。
身のこなしが全然違いますよね。

もう一本の「≒草間彌生 わたし大好き」も
78歳となった今でも、まったく創作意欲や美に対する情熱を失わないどころか
湧き出るようなエネルギーに満ち溢れた作品を生み出す力に、
ただただ脱帽。

しかも、無垢な魂のままに、わがままな愛すべき芸術家の
日常の姿にも感動してしまうなぁ。
本当にカワイイ! 
昨日来たお客様が、「草間ちゃんに元気もらいに来たの」
と言っておられましたが、なるほど!とすっごく納得しました。
70過ぎてるからって、ピンクのかつらや、ショッキングピンクの水玉模様を
着て何が悪い! 自分が楽しければいいじゃやない!っていう
とってもすてきな開き直り?が気持ちいいです。
っていうか、ご本人はまったく開く直ってるつもりないんですよね。
これがフツーなのです。

でも、まぁこんな天才アーティストだからカッコイイんだってことは
十分理解していますがね。
それでも、とにかく元気がわいてくることには違いないです!
ここのところお疲れの方には、ぜひお勧めの映画2本ですよ!

mm











2008⁄05⁄04(Sun) 11:56   シネマホール | | | ↑Top
修道院で育ったアヴリルが、はじめて見る外の世界は・・・・


南フランスの色って、やっぱりあの海と空の青のイメージなんでしょうか?

アヴリルは、南フランスのはずれにある小さな修道院で
捨て子として修道女たちに育てられた。

そして、修練女から修道女になるべく、つまりすべてを神に捧げる
聖女となるための儀式は、礼拝堂で2週間の断食と祈りをささげること。
ところが、ある修道女から、捨てられていた時に実は双子の男の子もいて、
その子は養子にもらわれて行ったことを知らされる。
そして、この2週間の間、礼拝堂を抜け出して兄を探しに行くように、
と告げられる・・・・

悩んだ末修道院を抜け出したアヴリルは、自転車で兄を探すたびに出る。

途中出会ったピエールに助けられ、人里離れた灯台のある浜辺で
やっと兄に会うことができて・・・

とまあ、こんな風に修道院という世の中から隔絶されたところで
清らかに育ったアヴリルが、兄や出会った人々ととの
新鮮な驚きやときめきは、見ている私たちに伝わってきます。

無垢で、神をまっすぐに信じる心の中にも、
若者らしい歓びや幸福が、まっしろなキャンバスに
鮮やかな色で描かれる絵のように美しく、命が輝きだす。

途中から、アヴリルたちの秘密も明かされるにつれ、
ちょっとしたミステリーサスペンスのような要素も加わってくるのが
この映画の面白さかもしれません。

冒頭、真っ青な絵の具で描かれる花の美しさ!
兄と二人で海に向かって話すシーン、
最後に病院で待つ4人の構図・・・
本当に美しいんだよね。
印象派って感じの映画です。

1週間のみの上映なのでお見逃しなく!

mm
















2008⁄04⁄27(Sun) 18:39   シネマホール | | | ↑Top
映画館まるごと体験ワークショップ


もうすぐ楽しいゴールデンウィークですね!

さて、フォルツァ総曲輪も、実は案外こういう連休は静かなんですね。
でも、そういう時にしかできないこともあるわけです。

ということで・・・・
できるだけフォルツァ総曲輪はオープンな場所にしたいと思っていますが、
これまで、いろいろな事情で、こういう企画ができなかったのですが、
今回思い切って、「映画館まるごと体験ワークショップ」と銘打って、
皆さんに、映画館の裏方の仕事を体験してもらおうという企画をやります。

5月3日(土)、5日(月)の祝日の2日間、
9:15〜16:00頃まで、映画館の1日の仕事
清掃、受付準備、映写準備、映写、ホールの点検などなど、
スタッフが日常やっていることまるごと体験してもらおうと言うものです。
一日映画館スタッフになったつもりで、映写をしたり、受付をしたり
してみませんか?
定員は一日3名限定。
(すでにお申込みもありますよ!)

また、その時にサポータークラブのメンバーお勧め映画を
大画面モニターで鑑賞して、ちょっとした映画談義も計画しています。

連休の合間、特に予定がないという方、
ぜひこの機会に、映画館体験してみてください!

お申込みは
076−493−8815
フォルツァ総曲輪まで

mm









2008⁄04⁄26(Sat) 13:50   シネマホール | | | ↑Top
幸せな下流生活?


「全然大丈夫」、おもしろい映画です。
って、こんな風に書くと、なにそれ?って言われそうですけど。

憩い系?キャラの荒川良々のために、
書き下ろされたこの映画は、ホントにどこまでも、
ほんわり、のんびり、つまりゆる〜い映画なのです。

とは言え、何にもそこにはメッセージはないのか!というとあながち
そうでもなのです。

いつ頃から、「勝ち組」とか「所得格差」(ちょっと違うかもしれないけど)とか、
KYとか、そういう言葉が蔓延してきたんでしょうね?
この映画は、こういう言葉からはかなり遠い精神構造の方たちばかりが
出てくる映画なのです。

つまり
「しわせな下流生活」だったり「勝たなくても幸せになれる方法」だったり
という生活というか、世界観?というか、そんな言葉がキーワードになるわけです。
いったい何が「全然大丈夫」なのかってのも、わかったようなわからないような、
そんなこととは別に、ばっかだよね、って言いながらも、
笑いながらいつの間にか、心がほぐれて優しくなるような・・・・

「頑張る!」のもいいけど、心が硬くなったり、気持ちがざわついたり
というのが、当たり前になりそうな今の暮らし。
ちょっとここらで、心のマッサージしましょうよ。

新入社員の皆さんや新入生の皆さん!
緊張しっぱなしの4月だったでしょうが、連休前に
ちょっと気持ちをほぐしに来ませんか!
こころのマッサージには、この映画はピッタシ!です!

mm












2008⁄04⁄26(Sat) 13:09   未分類 | | | ↑Top
ブラジルの心地よい音楽、その一方にある現実


「This is BOSSA NOVA」は、ボサノヴァが好き、という人にとっては
間違いなく、最高の時間をもたらしてくれる映画!

それでもおそらく、特にボサノヴァ愛好家でなくとも、
「イパネマの娘」
「ワン・ノート・サンバ」
なんて曲は、名前は知らなくてもBGMなどでもよく聞く曲として
誰でも知ってるんじゃないかな。
特に夏に聴くと、青い空とエメラルドグリーンの海の心地よい潮騒、
そしてさわやかな風・・・・そんなイメージが浮かんでくるはず。

アントニオ・カルロス・ジョビン、ジョアン・ジルベルトの若き日の姿。
ナラ・レオン、カルロス・リラ、ホベルト・メネスカルらが青春を過ごした
ナラのアパートや、イパネマや海やコパカバーナの通り。
ジョビンと詩人のヴィニシウスが出会うことで、数々の名曲が生まれて。

ボサノヴァの歌い方が、ささやくように歌うようになった
微笑ましいエピソードや、名曲が生まれた意外な話。
合間に演奏される名曲の数々。
まるで宝石箱のような映画です。

それにしても、若き日の出来事を語るアーティストたちの
それぞれのすてきな着こなし。
普通のなんでもないポロシャツやボタンダウンのシャツ姿が
こんなにカッコイイおじさんたち。
映像もすばらしいけど、こういうのを発見するのも映画の楽しみです。
東京では異例のロングラン上映となり、やっと富山での上映。
1週間のみで、4月25日までですので、お見逃しなく!


さて、先日東京で試写など2日間で5本の映画を観て来ましたが、
一番印象的だったのが、ドキュメンタリー映画「ファヴェーラの丘」

この映画の舞台は、リオデジャネイロのもう一方の世界。
実は「This is BOSSA NOVA」の中でも、ほんの少しですが、
語られたリオの貧困層のこと。

ファヴェーラとは、リオの丘の上に張り付くようにびっしりと家々が立ち並ぶ
スラム街のこと。
腐敗した警察に支配され、無法地帯となっているファヴーラの中でも
最も危険な地区であるヴィガリオ・ジェラウは、ボスニアよりも危険な地域と
言われるほど、殺人をはじめとした暴力が日常茶飯事の場所。
この状況をブラジル政府は、無視していると言うありさま。

そこで育った子供たちの夢は、ギャングのリーダーになること・・・・
命の軽さと生きることの過酷さに、若者たちの多くは「死ぬのは簡単なこと」と考える。
そんな場所で生まれ育ったアンデルソン・サーもそう思って生きてきた若者。
ところが、ある事件をきっかけに、彼は暴力はもうウンザリだと思った。
そして、はじめたのが熱いメッセージを込めた歌と激しいダンス。
音楽とダンスという「文化」で、暴力から離れる道筋を造ろうという運動を始める。
それが、「アフロ・レゲエ」という音楽とダンスのワークショップグループとなっていく。

「ファヴェーラの丘」は、このアンデルソン・サーの活動を追った、
スタッフたちの身の危険も乗り越えての渾身のドキュメンタリーです。
映像は、絵画的に処理されて美しいが、内容はかなり衝撃的。
でも、どんな酷い状況からも、希望の光は生まれる!という、
とても大きな感動を覚えます。
ヒップホップは、若者に大人気のダンスであり音楽。
でも、こんなに熱く悲しいメッセージと激しいダンスがあることを
ぜひ見て欲しい。
http://www.nowonmedia.com/favela/

恵比寿にある、東京都写真美術館ホールで上映されていますので、
連休に東京に行くことがある方はぜひ。
この美術館のミュージアムショップおよびカフェもとってもおしゃれです。

できれば何らかの形で、フォルツァでも上映したいと思っています。

mm












2008⁄04⁄21(Mon) 11:45   シネマホール | | | ↑Top
新しいスタッフになりました


当館のスタッフは、現在4名。
2月までは、4.5名だったけど、いろいろ諸事情があり、
2名が退職、3月にサポーターだったNさんが加わり4名に。
3月は、バイトで日大生のNさん(別人)が来てくれていました。
3月末には、もともと今年の3月までの時限付き?スタッフが
東京に戻りました。
日大生Nさんも、春休み終わって大学に戻りました。
そして、4月からひとり新スタッフが加わり、半分入れ替わりの新年度スタートとなりました。

大学生のNさんといい、新スタッフも23歳と言う若い男子で、
やっぱり若い人がいると、なんだか空気も違うみたい♪

まだまだ若くて、いろんなことが未熟な部分がいっぱいあります。
でも、二人とも、映画大好き、音楽も好き、人と話すのも好き、
というスタッフですので、どうぞこれからもあたたかい目で
見守っていただきたいと思います。

もちろん、「これは・・・・」と思われることがありましたら、
ぜひ忌憚のないご意見などもお願いします。

そういう自分も、年令関係なく、日頃の言動をチェックしていかないと・・・
若いスタッフに「いい年して・・・・」なんて言われないようにしないと。

桜満開のこの季節、桜の潔い咲きっぷり、散りっぷりを見ながら、
ちょっと反省です。

mm











2008⁄04⁄06(Sun) 20:36   未分類 | | | ↑Top
金子教授の映画学入門 10


  天才の描き方

フォルツァ総曲輪で上映された
「僕のピアノコンチェルト」
学生と一緒に観に行った。
学生たちにも「これならもう一度みたい」と満足度が高かった。
スイス映画なのでスイスドイツ語を学ぶのにもいい。

ビアノの天才誕生に母親は狂気し、英才教育を試みるが
成長のスピードに教師が追いつかない。
七歳年上のベビーシッターに寄せる恋心。
頭と身体がちぐはぐでうまく進行していかない。

心を閉ざした彼を支える祖父との会話がいい。
誰でも昔は子供だつた。でもそれを覚えている大人は少ない。
かじかんだ彼の心を暖め、羽ばたかせてくれた祖父が
最期に家族への感謝の気持ちを手紙に託す。

圧巻は祖父とともに飛行機操縦に取り組むところだ。
今までの足かせをはねのけるように自由に大空を飛ぶ。
いやがっていたピアノのレッスンを
自らの意志で再開するために城に向かう。

観ている者も一緒に爽快感を味わい、
自由への羽ばたきにワクワクさせられた。
ラストの12才の天才ピアニストとオーケストラとの
コンサートはまさに至福の時だ。

さて、フォルツァ総曲輪では、先週は
「呉清源 極みの棋譜」も上映された。
中国福建省生まれで
現在、神奈川県小田原に住んでいる
「昭和の碁聖」と称された呉清源の半生を描く
田壮壮監督の四年ぶりの新作である。

呉清源を演じるチャン・チェンの静謐なたたずまいが、
ワダエミの衣装によって
ドキメンタリー映画のような実在感を生み出している。

川端康成が敬愛し、
『呉清源碁談・名人』(文芸春秋)を著して有名だが、
日中戦争下をどう生きたかはあまり知られていなかった。
今回の映画化で囲碁界の天才が
どのように囲碁の道に精進してきたか
戦争の激動の時代をどう生きたか、
昭和史の一断面を切り取り、見ごたえがあった。

天才といわれる人物の信念と信仰の物語。
観るものの襟を正す映画。
碁盤をまっすぐ見据えるチャン・チェンのまなざし
田監督はそこに人生の真髄を見出すかのようだ。


このような被写体へのアプローチは、
最新上映の「アニー・リーボヴィッツーレンズの向こうの人生」に通じるものがあった。
ジョン・レノンを最後にとった女性写真家リーボヴィッツは、
アメリカを代表する知識人スーザン・ソンタグのパートナーだ。
彼女の影響を受け、写真家として新たな道を切り開いていった。
フォルツァ総曲輪でも上映されれば、
更なる広がりのある視点が育まれるだろう。

金子幸代
研究室URL; http://www.hmt.u-toyama.ac.jp/hibun/kaneko/





2008⁄03⁄24(Mon) 20:20   未分類 | | | ↑Top

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